「このままでいたら自分の成長は無いのではないか?」意外な転機と、揺るぎない成長意欲が生んだキャリア
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2025.04.25
プロフィール
遊佐 知衣(ゆさ ともえ)
所属:リストファーム合同会社 代表社員
(兼任)リストデベロップメント株式会社 投資・開発事業本部 2部 3課 係長
経歴:駒澤大学文学部卒業 2019年新卒入社
新卒ではリストインターナショナルリアルティに配属され、新築マンションの販売に従事。社内公募制度を利用して2022年11月にリストデベロップメントへ異動。2023年にリストファームを立ち上げ、代表社員に就任。
趣味は映画鑑賞。
リストデベロップメントは2023年に俱知安町樺山を 拠点とする農業法人リストファームを設立。リストデベロップメントは首都圏を中心に不動産事業を展開する会社なのに、なぜ北海道で農業を始めたのでしょうか?
設立の背景や今後の展望について、入社7年目にして代表を務める遊佐さんにインタビューしてみました。
――まずはリストファームがどんな会社なのか、詳しくお聞かせいただけますか?
北海道倶知安町にて地域に根付いた農業経営を目指しております。収穫した作物は農協に 出荷したり、ふるさと納税に出品をしたりしています。また、LDにも出荷することでリストグループの契約者様やお取引先の皆様にお配りもしました。
初年度となる2024年にはじゃがいも60トン、かぼちゃ7トン、とうもろこし2トン、にんじん1トンとまずまずの収穫実績を残すことができ、今後は作付面積を拡大していきたいと考えています。
不動産会社が農業を始めるのは異例だと思います。経緯をお伺いできますか?
LDとして別荘地開発のためいくつかの土地に着目していた中で、一部が農地となっている土地に出会ったことが農業事業参入を考えるきっかけでした。農地の使い方を検討する第一歩として、土地を売却してくださる農家さんとお話ししましたが、その話がすごくショックで…。
どんな内容だったのでしょうか…?
日本全体で農業の高齢化、離農者の増加、承継者不足が進んでいるというのは皆さんもなんとなくニュースで耳にしたことはありますよね?北海道も例外ではなく、私の想像をはるかに超えるスピードで離農が進んでいました。私は道産子なので、衝撃的で悲しくて…。
こういった社会問題に耐えきれなくなった農家さんは土地を売却せざるを得ない状況になっており、ニセコエリアの名産品を作る場所が少なくなる危険性があると感じました。この現状を目の当たりにし、LDとして何かできることはないかと、考え抜いた結果が新規事業としての農業事業参入でした。
LDの本業である別荘地開発をきちんと成功させた上で、そこで得た利益を持ち帰るのではなくリストファームを通じ、農業など様々な形で再投資することで地域貢献の一助になるのではないかと考えました。
――当時入社6年目で会社の代表に大抜擢されましたよね!初めにその話をもらった時、率直にどんな気持ちだったんですか?
その話が出たのが2023年9月でした。「え!?ほんとに!?」と少し心が高鳴ったのと同時にとても驚きました。そしてもちろん怖さもありました。
「社会人6年目、しかも異動してきて1年ちょっとで本当に代表をやるの!?それはさすがに無理だよ…。」と、もらった話に対して正直及び腰でした。なので実はLD社長の木内さんがLFの代表も兼任する予定で法人設立の準備をスタートしていました。
――あれっ、そうだったんですか?
実は(笑)。ただ、その後1か月、引き続き現地で仕事を進めていく中で、少しずつ責任感や使命感が湧き出てきて。現地の方からすれば、顔が見えない人ではなく第一線でやり取りをしている私が代表を務める方がやはり安心感はあるのではないかと思ったんです。
私たちも初めてやるビジネスだからこそ、現地の方々にもいろいろとご協力いただいている点もありました。そうやって相手に協力を求めるのであれば、こちらとしても腹を括るべきだし、私も覚悟を決めて異動してきた。
であれば、私がやるべきだし、私にしかできないことだと思うようになったんです。そこから代表者を変更して、私を代表として11月に正式な法人設立を迎えます。
――素晴らしい使命感ですね。代表になると仕事上どんな変化があるものなんですか?
責任感がもう天と地の差ですね。いくら当事者意識といっても、なんだかんだ上司がいれば「ま、最後は上がなんとかしてくれるっしょ」って思っちゃうじゃないですか。ところが、私は上を見ても誰もいないんですよね(笑)。
もちろんLDの役員の方々が相談には乗ってくれますが、新規参入で誰も知識や経験のない中、できる限りの情報を集めた上で自分でジャッジメントしなければならないのでそのプレッシャーはえぐいなと感じています。外部の方から見た時も、代表者はやはり私ですしね。
また、言葉の選び方にも気を付けるようになりました。正直でいることは大切にしているんですが、言葉の使い方を誤ると変な誤解を招いてしまうこともあると思います。立ち居振る舞いもそうですし、資料作成一つとっても、常に見られている意識を持って仕事に臨んでいます。
きっと想像もつかないようなプレッシャーの中仕事をされていらっしゃると思いますが、遊佐さんの原動力はどんなものなんでしょうか?
「人」ですね。農業ビジネスの立ち上げにあたり、社内から2人異動をしてきてくれました。やること全てが初めてのことですが、2人とも必死にやってくださっていて。
でもそれって当たり前のことではないからこそ、感謝の気持ちは忘れたくないんです 。そして、それ以上に代表の自分が一番頑張らないと一緒にやろうと思ってもらえなくなっちゃうんじゃないかなとも思っています。
リストファームのメンバーが喜んでいる姿や仲良く話している姿、おいしそうに食事している姿を見ると、とっても嬉しくて。この関係性が続くように、皆が生き生きと働けるようにしたいと思っているのが、今の私の何よりの原動力になっていると心から思えます。
――今後、リストファームをどのようにしていきたいとお考えですか?
リストグループが北海道に入らせていただいたご縁とご恩を忘れずに、倶知安町でまずは絶対的な信頼を勝ち取れるようビジネスを続けていきたいなと思います。
「地域の方々から必要とされる会社、愛される会社であり続ける」ことは、リストグループが創業から大事にしてきているので、まずはそこを体現していきたいです。
――地域密着を大事にされているんですね。
そうですね。日本企業として、私たちが北海道に懸ける想いは違うんだぞ、という姿勢は見せ続けたいです。なので、途中で投げ出したり、別の場所に行って完全移行するみたいなことは絶対にやりたくないと考えています。
だからこそ倶知安町に企業版ふるさと納税を活用して寄附もさせていただきましたし、そういった取り組みも含めて地域の方々からご評価していただき始めていることはとても嬉しいですね。
(プレスリリースはこちら)
――ビジネス面ではどんなことを考えていらっしゃるんですか?
農業は収穫物が無いとビジネスが成立しないので、まずは作付面積を増やしていきたいと考えています。24haが採算ラインなので、今の4.7haをそこまで伸ばしていきたいですね。
その上で、方向性はブランド化か加工するかなど、いくつか方法はあると思っています。ここについては正直まだ模索中ではあるんですが、LFの事業規模が大きくなっていくにつれ、いろんな可能性が見えてくると思っています。
実際に、最近では私たちの活動をニュース等で見てお問い合わせをくださる方が増えたんです。北海道の農業事情に同じように問題意識を持ち、様々な活動をされていらっしゃる方々と意見交換ができるのはとても嬉しいですね。もっとコラボレーションを増やして、民間企業ならではの解決策を探っていけるといいなと感じています。
――1年半農業ビジネスをやってきて、なにか新たな気付きであったり考えの変化があった部分はありますか?
大げさかもしれませんが、 「日本の食を守りたい!」、この想いがより一層強くなりました。今ニセコエリアに外国人がたくさん来ていて、倶知安町とか北海道の食の素晴らしさにみんな感動して帰っていくんですよね。日本の食文化のレベルの高さは世界有数のものになってきているんです。
その中で、今の日本は国力が弱くなりつつあるじゃないですか。もし海外の富裕層の方々が本気出して日本の土地を買い始めたら、日本の大切な食文化が簡単に全部持っていかれちゃうかもしれない。
現地に入ったからこそ分かったことですが、今実際に富良野の土地が相当中国資本に買われていて、地元の方々からも危機感を感じているという声を聞いたことがあります。
もう本当にやばい、日本企業としてジャパンマネーを投下していかないといけないタイミングになってきているんじゃないかと強い危機感を持っています。
――日本の土地が海外の方々に買われていくというのは、なんとなく悲しい気持ちですよね…。
「そんなもんじゃないでしょ、私たちの力は。日本企業負けんなよ!」って思っちゃうんですよね。リストファームはまだ事業をはじめて1年ですし、業界全体で見たら事業規模は全然大きくない。
でも、日本全体が抱える問題にまず一石を投じたいと思っていて。もちろん日本が抱える問題は農業だけでなく山ほどあるので、各々が自分の得意分野で社会課題の解決に向かって頑張っていったら日本にも明るい未来が待っているんじゃないかなと思います。
――私たち一人一人がどう頑張っていくのか、というのはすごく大切ですよね。最後に学生さん向けに一言いただけますか?
入社したばかりの時は、右も左も分からず覚えることも多くて、とにかくがむしゃらに過ごす時間が多いと思います。辛いと感じる時間もあると思うのですが、数年経つとキャリアアップのチャンスが必ずあります。
そのチャンスは「素直で一生懸命な人」に来るものではないかとも思います。最初に就いた業務内容を頑張った努力が実を結ぶこともあると思いますが、とにかく頑張っていたという姿勢が実を結ぶこともあるのだと、私自身とても体感しました。
何がきっかけで自分がどうなっていくのかなんて誰にも分からないし、誰にも決められるものでもありません。とにかく自分の直感信じて、来るべきタイミングでチャレンジできるように、普段から新入社員らしく明るく元気いっぱいに頑張ってほしいと思います。
遊佐さんの熱い気持ちが伝わってくるインタビューでしたね。
昨今様々な場面でSDGsに取り組む企業や人が増えてきておりますが、「農業」という分野には大きな可能性が満ちていると考えています。
リストグループの面白いところは、不動産会社でありながらも不動産事業以外のことにも積極的に挑戦していくところ。農業にも興味を持っていただけるようであれば、ぜひ遊佐さんにもっと詳しく聞いてみていただけると嬉しいです!