何も武器が無い20代だからこそ、スキルを磨ける環境に身を置きたい―次代を担う中堅社員の歩み
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2025.12.10
プロフィール
鈴木 篤(すずき あつし)
所属:リストデベロップメント株式会社 投資・開発事業本部 3部2課課長代理
経歴:明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻卒業 2013年新卒入社
新卒時はリストインターナショナルリアルティへ配属され、3年間不動産の売却営業を担当。
グループ別会社へ異動後は、シェアオフィス事業、小売電気事業、無人ホテルといった新規事業の立ち上げも行い、2023年にリストデベロップメントへ異動。
「THE TOWER 湘南辻堂」や軽井沢のホテルプロジェクトの商品企画を担当する。
趣味は料理、漫画。
2025年9月に竣工を迎えたTHE TOWER湘南辻堂。
タワー型複合開発という大規模な計画を進めるうえでどのようなことを考えていたのか。
今回は本プロジェクトの商品企画担当者にインタビューを行いました。
この記事は本プロジェクトに関する第二弾の記事となります。
第一弾を見ていない方はまずはこちらからご覧ください。
➤第一弾インタビュー https://h7.cl/1fIWZ
――鈴木さんは本プロジェクトにおいてどのような業務を担当されたのですか?
2019年当初のコンセプト作りから携わらせていただきましたが、具体的には商品企画や販売広告をメインに任せていただきました。
建物のコンセプトや名称決めという大枠の内容から、室内や共用部にどんな設備や機能を入れるのかという詳細な企画まで幅広い業務を経験しました。
また、マンションの販売にあたってより効果的に商品の良さを感じていただけるような広告作りにも挑戦し、商品のコンセプトに沿って協力会社様と打ち合わせを重ねました。
――竣工を迎えた「THE TOWER湘南辻堂」ですが、こちらの名称はどのように決められたのですか?
社内のプロジェクトメンバーで意見を出し合うとともに、広告代理店からもご提案を受けながら様々な候補と比較のうえ決定していきました。
湘南エリアにおいて一番の高さで、江ノ島からも見えるほど存在感のある建築物になるため、「地域のシンボルとして象徴的な名前にしたい」というのが検討初期段階の想いとしてありました。
名称が決まって尚、漢字かローマ字か、大文字か小文字かという表記の細部にまでこだわりました。シンプル且つ格式を感じてもらいたいという想いから大文字のローマ字に決定しました。

――ご担当の商品企画とは、具体的にどういったことをするのでしょうか?
開発プロジェクト全体のコンセプトを決定した後、そのコンセプトをもとに商品である建物の外観、各階の造り、内装、仕様等の詳細のようなミクロな部分を決めていくようなイメージです。
――開発全体のコンセプトを建物のミクロな部分にまで落とし込むのですね。
その通りですね。第一弾でも話があったと思いますが、湘南方面は自然豊かで、海の印象が強い地域です。
海岸線のゆったりした雰囲気が好きな方やサーファーには根強い人気がありますが、街の更なる発展のためには多様なライフスタイルを受け入れていくことも重要です。
だからこそ、「Local×Modern」というコンセプトを掲げ、「地域性」と「現代風」という一見両立し得ない要素の融合を目指しました。
単身世帯やDINKs(※)など、異なるライフスタイルの方々にも住んでいただくことで、多様化の促進と将来的な街の発展に繋げていけるような建物づくりを心掛けましたね。
※DINKs:Double Income No Kidsの略。共働きで子どもを意識的に持たない家庭やその生活観。
――コンセプトにはそういった想いが込められていたのですね!
ええ。ただ、実は先程のコンセプトは社内や協力会社様と大枠の共通認識を持つためのものであって、お客様に向けて商品の魅力を訴求するものではありません。
そもそもの開発全体の大きな方向性を、建物や仕様という細部に落とし込んでいく際に、目指すべき指標のような形で機能してくれたと思います。
――具体的にはどのような建物をイメージされていたのでしょうか?
駅直結のタワーマンションということで価格は決して安くはありませんし、比較対象は都内や主要駅のタワーマンションとなります。
都内を中心に、これまで辻堂に地縁の無い方々に関心を持っていただくためにも、都心のタワーマンションに引けをとらない本格的な質の良いタワーマンションを作ろうと話していました。
といっても、高級な物できらびやかに飾り立てるのではなく、シンプルながらも格式を感じる。そういった住宅を目指しました。

ホテルライクな共用廊下
たとえば、住宅階の共用廊下には絨毯を敷き、ほのかな明かりでホテルライクな雰囲気を演出しています。
また、居住者の皆様にご利用いただけるオーナーズラウンジ、ワークスペースにもこだわりました。
イタリアの高級家具メーカーであるカッシーナ・イクスシーに空間デザインを監修いただいております。
シックに寄り過ぎることなく、周辺地域の自然豊かな雰囲気にも調和した高級感を感じていただけると思います。

オーナーズラウンジ

ワークスペース
――プロジェクト中、新型コロナウイルスの影響はありましたか?
少なからずありましたね。プロジェクトをキックオフした翌年、世界的にコロナウイルスが流行して人々の生活の様相は大きく変わりましたよね。
出社せずに勤務するリモートワークが一般的になって、自宅に仕事用のスペースを求める方が増加し、都心から離れて暮らす人も増えました。
本プロジェクトにおいてもリモート需要に対応するため、カウンターデスクを設置した個室を間取りに組み込む等の対策を打ちながら、世の中の変化に対応していきました。
――プロジェクト中の世の中の大きな変化…難しい状況ですね。
ただ、デベロッパーにとってはよくあることだと思います。
たとえば、企画した時には最新だと思っていた間取りや設備仕様も、完成する頃には時代遅れになっているということもよくある話です。
通常のマンション開発であれば企画から竣工まで3年前後ですが、大規模な開発となるとプロジェクト期間はさらに長くなり、完成が5年以上先になることも少なくありません。
――5年以上先を見据えた商品企画となると、非常に難易度が高いように感じてしまいます。
商品も年々進化していくので、仕方の無いことではありますね。
私たちのミッションの一つは、実際にお住まいになる方々にとって便利で生活しやすい設備や環境を作ることです。
魅力を感じて購入したマンションが、住んでみたらなんだか住みづらい…なんて不幸じゃないですか。
時代に合った生活が送れるような、暮らしを便利にする設備や機能は積極的に取り入れたいと考えていました。
――具体的にはどのようなものを採用されたのですか?
まず、昨今の宅配ニーズの高まりを鑑みて、各階に宅配ボックスを設置いたしました。
一般的なマンションは宅配ボックスが一つのフロアにまとまっていることが多いですよね。
世帯数の多いタワーマンションにおいては、エレベーターを行き来して都度別のフロアに荷物を取りに行くのがことさら手間になります。
各階に設置することでそういったストレスを軽減する狙いです。
――導入にあたって何か懸念点はありましたか?
もちろん懸念点もあります。各階まで届けるにはそもそも宅配業者の方がオートロックを解錠する必要があり、セキュリティの問題が生じます。
ただ、各階の宅配ボックスは必須だと考えていたためセキュリティをクリアできるサービスを探していたところ、非常に良いサービスを見つけまして。
――どのようなサービスですか?
未配達荷物の伝票番号を認証することでオートロックが解錠されるPabbit(※)というサービスです。
居住者が自宅にいなくても宅配業者が各階まで荷物を運び宅配ボックスに収納できるため、居住者の方々の利便性に繋がるとともに、社会課題になっている物流問題対策にも繋がると思っています。
度重なる再配達による宅配業者への負担を軽減する仕組みになっていることも素晴らしいポイントですよね。
※Pabbit(株式会社Pac Portが提供する宅配システム) https://pabbit.cloud/

――住む方だけでなく、様々な方にとってメリットのあるサービスなのですね。
そう思います。宅配ボックスの中では当時メジャーな商品ではありませんでしたが、これは絶対に良い商品だと感じていたので導入できて良かったです。
この他にも、担当者としては良いと思えるサービスがあるのですが、細かな部分なので初見のお客様に良さを感じていただけるかに関しては不安が残る所でした(笑)。
――ぜひそういったこだわりのポイントも聞かせてください!
一つあげるとすれば、ポイントはお風呂にあります!
近年、外出先からでも浴槽のお湯張りをスマホから指示できる商品が増えていて、お家に着いたらすぐに入浴できるという日々の暮らしを便利にする優れ物だと思います。
ただ、私はそれだけだと不十分だと思っていて。
――どういった観点で不十分と感じるのですか?
たとえば、家の鍵を閉めたか閉め忘れたか不安でわざわざ確認しに戻った、なんて経験ありませんか?(笑)。
きっとお湯張りも同じで、そもそも外出前にお風呂の栓を閉め忘れていたらお湯を溜められませんし、ちゃんと閉めたか不安だと使用できないですよね。
そういった状況を防ぐために、お湯張り時に浴槽の栓も連動して閉めてくれる「自動排水栓」のあるメーカーを選びました。
これは担当者として譲れないポイントだったので、早い段階からこの商品を使うとプロジェクトメンバーには伝えていました。
――かゆいところに手が届くような設備なのですね!
お客様にもそう感じてもらえたら嬉しいですね。その他にも、高速インターネット、エントランスのハンズフリーキー、IOT関連の設備は充実させました。
魅力的な設備は世の中に沢山ありますが、あれもこれも詰め込もうとするとコストの壁にぶつかります。
日々の暮らしが便利になることに優先順位を置き、お客様が後からお部屋のリフォームだけで実現できることは優先順位が下がります。
IOT対応など、建物全体に関わることは初めにしかできませんから、そこは私たちデベロッパーの仕事。そういった観点で設備の導入を決めていきました。
――ちなみに、販売広告の内容についてもお伺いできますか?
居住部分を分譲販売する上で、ターゲットとなるお客様に物件の魅力をいかに訴求し、興味を持っていただくかを考えていきました。
建物が出来上がるまではなかなかイメージが湧かないため、モデルルームの案内時にお見せするシアター映像を作成しました。
どんな映像がいいか、ナレーションの声は男性なのか女性なのかに至るまで、様々な項目について広告代理店やライターさんなどのクリエイティブ担当の方々と協議をします。
実際にナレーションのレコーディングにも立ち合いましたが、まるで広告会社に入ったようでめちゃくちゃ楽しかったですね(笑)。
声を入れていただきながら、プロジェクト担当者目線でも「もっとこういうイメージでお願いします」と感じたことを伝えたりしながら作り上げていきました。

――販売広告を検討する上でどのようなことを意識されましたか?
様々な手段や媒体で販売広告を行う中で、それぞれに統一感を持たせることにはとても気を使いました。
マンションのモデルルーム、駅や電車に掲載する広告、WEB広告など広告や宣伝の形は様々でしたが、何か一つでもニュアンスが異なるものが混ざると、本来伝えたいことの純度が下がってしまうからです。
――そこまで意識して広告を見たことがありませんでしたが、細かい部分まで気が配られているのですね。
また、これは広告ではないのですが、販売を担当される営業担当の方々に設計や商品企画の意図を丁寧に共有することも心掛けました。
作り手として意識したコンセプトやこだわりをそのまま伝えるのではなく、お客様に正しく魅力が伝わるよう再編集して伝えることは重要だと思っています。
そのために必要な労力は惜しまずに費やしましたね。
――最後にこのプロジェクトのやりがいについて聞かせてください!
今回のプロジェクトの中には初挑戦の業務も多く、本当に幅広い経験をさせていただきました。自分で仮説を立てながら検証をしていき、考えたことがこのような大きな規模の物件として形になる。
月並みかもしれませんが、デベロッパーとしてのやりがいはやはりこれに尽きると思います。ここまで責任のある仕事を任せていただけたことに関して、会社にも本当に感謝しています。
デベロッパーとしてお客様にどんな価値を提供できるのか。
建物の名称から日々の暮らしの細部にまでこだわり、その魅力をあらゆる角度から伝えようとされる鈴木さんのお話が印象的でした。
次回、辻堂プロジェクト開発秘話シリーズの最終回となります。
第3弾にもぜひご期待ください!