玉川上水の緑に寄り添う道のほとり。ここに、美しく、堂々たる邸宅の構えを。―リストレジデンス武蔵野御殿山
- 新築マンション
- 設計
2025.10.31
《物件概要》
物件名:リストレジデンスセンター南パークサイドテラス
住所: 神奈川県横浜市都筑区荏田東2-19-1
アクセス:横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南」駅
構造:鉄筋コンクリート造 地下1階、地上5階建 延床面積 約5,944.23㎡
分譲戸数:64戸
設計:株式会社アーキタンツ一級建築士事務所
施工:株式会社大勝
デザイン監修:株式会社インタープランデザインセンター
竣工:2024年8月
駅から徒歩12分と、マンションの立地としてはデメリットがあったリストレジデンスセンター南パークサイドテラス(以下、LRセンター南)。しかし、緻密な商品企画と設計の工夫によって、結果的には大成功を収めました。
後日、グッドデザイン賞の受賞にも繋がるLRセンター南の魅力を、設計担当者の登坂にじっくりと語っていただきました。
プロフィール
登坂 庸介(とさか ようすけ)
所属:リストデベロップメント株式会社 企画設計部 2課 課長代理
経歴:東京理科大学理工学部卒業 2012年中途入社
新卒では大手住宅メーカーにて戸建の営業職及びマンションの設計を経験。その後ゼネコンやコンサル業界を経験し、2012年にLDへ中途入社。現在は新築マンションやリゾート案件を中心にプロジェクトに携わる。
趣味はお酒全般。
――「センター南」駅はいわゆる「港北ニュータウン」エリアに属すると聞きました。まずはエリアについて教えていただけますか?
「港北ニュータウン」エリアは横浜6大事業のひとつとして1965年に構想され、約2,500haもの壮大な街づくり計画にて誕生しました。港北ニュータウンの大きな特徴として、歩行者と自動車の動線を計画的にしっかりと分けていることが挙げられます。
さらには、グリーン・マトリックス(※)として保存緑地や緑道も多く残されており、豊かで安全な生活を提供することを都市計画の段階で配慮しています。
都市計画の段階から住む人の心地よさと安全性を追求した、誇るべき街ですね。
※グリーン・マトリックス
港北ニュータウン内に点在する公園・緑地を緑道で結び、連続した緑地帯を形成している。
ニュータウンの計画では幹線道路を最初に設計し、そこに合わせて住区を設定していくことが一般的と言われる。しかし、港北ニュータウンにおいては緑道を最初に設計しており、グリーン・マトリックスは港北ニュータウンの象徴とも言える。

熟成した街並みとグリーン・マトリックスによる緑の保全。
――街の緑や自然の魅力は、住む人にとって大きな財産ですね!
そうですね。それでいて駅前には商業施設が揃い、利便性も高いところが非常に魅力的です。特に「センター南」駅は港北ニュータウンの中心に位置し、利便性と自然が共生する新しい街であることから、現在でも人口が流入してくる「若い」街です。区として子育て支援が充実しているところも特長ですね。
――そうなってくるとターゲットはファミリー層になるんでしょうか?
仰る通りです。メインターゲットとして想定したのは30~40歳代のファミリー層、子育て世代でした。
もう少し具体的にお話しすると、環境意識が高く、良いものに拘り、共働きで世帯年収1,000万円を超える高収入のビジネスパーソンですね。そういった方々は、平日は仕事・家事・育児を効率良く行い、休日もアクティブに過ごされます。
それらを踏まえて、今回のコンセプトは
最も充実した時期を、大きな緑と空につつまれながら、心地よく
としています。
具体的な設計段階においては、
① アクティブな休日を過ごすための住まい
② 家事支援、子育てしやすい住まい
③ 緑・自然を感じられる住まい
上記3点が大きなポイントでした。

――コンセプトの実現に向けて、具体的にどのような設計にしたのか教えていただけますか?
まずはアクティブな休日の生活スタイルの観点からお話ししていきますが、具体的には3点工夫をしています。一つは、不在時にも食材配達サービスを利用した荷物を受け取れるよう、共用部に「食配ステーション」を設けています。荷物の受け取りのために帰宅時間を調整するストレスが無いのは良いことだと思います。
コロナ明けで趣味としてアウトドアを楽しむ方が多いと想定したことから、全住戸にトランクルームを設置し、駐車場をハイルーフ仕様にしたことも工夫した点です。キャンプ用品やアウトドアグッズ等、収納力が大幅に高まりましたし、アウトドアを趣味にする方は車も大きいですからね。
また、玄関に土間スペースを用意した間取りも設定しました。こちらは高級自転車やスポーツ用品を置いたり、DIYのスペースとして活用いただく想定で、多様な趣味に対応できるような設計としています。
どれもお客様からのリアクションが良く、狙い通りの設計となりました。


トランクルームとハイルーフ対応の機械式駐車場。
――ライフスタイルを上手く捉えた工夫ですね!家事や育児の面ではいかがですか?
安心・安全な住まいづくりという観点で、リストレジデンス横濱桜木町と同様、良水工房(※1)を導入しています。
料理に使う水はもちろんのこと、洗面所やお風呂から出る水も全て浄水となるため、髪や肌によく赤ちゃんには安心ですよね。
子育て世代をターゲットにしているので、玄関にはベビーカーが置けるマルチスペースやお出かけ前に身だしなみのチェックができる姿見を設けています。
また、今回の目玉はなんといってもランドリースペースです!
「乾太くん」(※2)を導入し、家事動線を整えたことはお客様からも非常に好評でした。
※1良水工房
一般的な浄水器とは違い、マンションの地下タンクに取り付ける浄水システム。家から出る全ての水が浄水となる。
※2乾太くん
ガス衣類乾燥機。約1時間で洗濯物が乾き、使用者の99.4%が満足していると言われる優れモノ家電。近年人気が高く、一戸建てでの設置が増えてきているが、マンションでは、天井内に専用のダクト配管が必要となり、設計時の設備検討が複雑になるため、採用事例が少ない。
――具体的にどのあたりが好評だったのでしょうか?
洗う、乾かす、畳む、しまう、が一つの空間で完結する点ですね。大幅な時短になるので、共働きで仕事終わりに家事をこなす家庭にとっては嬉しいものとなったと思います。
デッドスペースとなりやすい洗濯機の上の空間には可動ハンガーパイプを設け、デリケートな衣類はここで干すことも可能です。
一般的に、一戸建てに比べてマンションの洗面室は収納が少ないと言われますが、本物件はそこもクリア。スペースを効率良く使い、収納力も高めることで機能性が高いランドリールームとして仕上げることができました。
購入後のアンケートでは、約6割の方が「ランドリースペースが購入の決め手の一つとなった」と回答してくれました。

ランドリースペースに詰め込まれた様々な工夫。
――やはりファミリーに絞った工夫が多いですね。
そうですね、部屋の広さも今回は3~4LDKに絞っています。最近のトレンドではマンションのコンパクト化が進んでいて、同時期に販売していた近隣のマンションでは1~2LDKも含んだ間取りにしていました。
しかし、港北ニュータウン内の賃貸住宅などは面積が広く、このエリアで住宅を求める人の多くは広めの間取りに馴染んでいます。LDではすでにセンター南、センター北で3棟の分譲マンションを手掛けた実績もありましたし、港北ニュータウン支店(現在は武蔵小杉支店と統合。)とも連携して市場の動向は掴んでいたのでロット割に迷いはありませんでした。
結果的には競合物件との差別化にもつながり、手応えがありましたね。

マンションの共用部。
勉強や読書、テレワークにも使えるワークカウンターも設けている。
――緑の活かし方についてもお伺いできますか?
そうですね、ここは本当に苦労しました。敷地の西側に700㎡にもわたる既存林があったため、これをどう守りながら住まいを設計していくかが今回のプロジェクトの成否を分けたと言っても過言ではないと思います。
具体的に検討したことは大きく二つです。

マンションの配置図。上が北。
まず注目してほしいのが、建物の配置です。
今回は3棟に分かれる形で造っているのですが、珍しいと思いませんか?
――すみません、どこが珍しいのでしょうか…?
なかなか気付きにくいですよね(笑)。
通常、不動産で一番人気があるのが南向き住戸であることはご存知ですよね?
だからこそ、通常であれば南棟をもっと横長に大きく、そしてその分西棟を縦に小さくして、南向きの住戸を増やすんです。
――あっ、確かに言われてみればそれが常識ですよね!今回はなぜそうしなかったのですか?
実は南側に別の大きな建物があり、眺望が良くなかったことが要因の一つです。加えて、西側にあるせっかくの既存林をなんとか活かせないかと思いまして。バルコニーをセカンドリビングと捉えて大きくするのであれば、今回の目玉住戸を西側に設定できると考えたんです。
これは結果として大成功で、西向き住戸はお客様からも非常に良いリアクションをいただきました。

奥行き最大3.5mのワイドバルコニー。港北ニュータウンエリアならではの緑を最大限享受できるだけでなく、ガーデニングやブランチも楽しめる空間となっている。
――常識に囚われない工夫は素晴らしいですね!
ありがとうございます。もう一点、ぜひお話ししたいのは既存林そのものの存在です。
土地を取得した際は手つかずの雑木林の状態であり、現状のままでは薄暗く虫の問題も懸念がありました。
商品開発の面から一般的に考えれば、無くして整備するのが一番手っ取り早い話なんだと思います。しかし、既存林は横浜市との協定により伐採することができず、所有者が維持管理していく義務があります。
であれば、「敷地内に建物が立てられないエリアが700㎡もある」と、デメリットとして捉えるのではなく、「いかにしてメリットに変えていくか?」と発想するのが自然だと捉えました。

――既存林の存在をメリットに変えていくために、具体的にどう仕立てたのでしょうか?
港北ニュータウンにおいて、緑は大切な資産です。だからこそ、目先で販売するために整備をするのではなく、未来に繋がる維持管理計画の構築が重要でした。
そこで、先ず植栽会社をコンペにより選定し、既存林の再生方法から模索しました。併せて、維持管理計画ではランニングコストが大きなカギを握るため、繰り返し管理会社と協議し、適切な管理費として落とし込んでいきました
――植栽計画から着手するのは珍しいですね!
そうですね、通常はデザインの大枠を決めて、設計会社やゼネコンを選定することを優先しますからね。そういった意味ではプロジェクトの進め方自体も少し特殊な形だったかもしれませんね。そこも含めて、グッドデザイン賞の受賞につながったんだと思います。
――そうですよね!LRセンター南が2025年のグッドデザイン賞を受賞したと聞きました!おめでとうございます!
ありがとうございます。今回は応募5,225件の中から選んでいただいたのですが、率直に嬉しいですね。昨年は新築のオフィスビル「12KANDA」が受賞しており、会社として2年連続となることもポジティブに捉えています。
――そもそもグッドデザイン賞とはどんなものなんですか?
日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨制度です。産業や生活を豊かにする優れたデザインを顕彰する「Gマーク」で広く知られており、製品、建築、ソフトウェア、サービス、ビジネスモデルなど、幅広い分野の「モノ」や「コト」が対象となります。
デザインの優劣だけを競うものではなく、審査を通じて社会への貢献や新たな価値の創造を促すことを目的としているところが特徴ですね。
――ただ外観がかっこよければいいというわけではないんですね。では、今回の受賞の経緯を伺えますか?
前述と重なる部分もありますが、受賞に至ったポイントは3点あります。まず一つは、雑木林であった敷地内の緑豊かな自然林を「サステナブルガーデン」として保全・再整備したことです。
枯れかけた桜の再生、日差しや風通しを確保するための計画的な剪定、既存林内の落ち葉を堆肥に変えるコンポストを設置する等、地域の貴重な資産として未来に継承することができました。
二点目は、その緑を居住者が楽しめる仕掛けを作れたことです。先ほどお話しした緑地に面した大型バルコニーに加え、敷地内に整備した遊歩道や樹銘板も評価のポイントだったと思います。

敷地内の遊歩道。木漏れ日と散策を楽しめる。
――樹銘板、ですか?
敷地内のシンボルツリーや自然林の高木などには、樹種を学べるように樹銘板を設置したんです。その板面に居住者の子どもたちの夢を記すことにしたんですよね。
10年、30年先でも居住者の皆様に親しみを持ってほしかったですし、親世代から子世代へ住み継がれるマンションとなるよう願いを込めたアイディアでした。

21人の子どもの夢を刻んだ樹銘板。
――そういった部分でも思い出が育まれる仕掛けは素敵ですね!
そして、前述の通り、ただ整備するだけでなく、将来的に維持できる仕組みを整えたことが三点目の大きなポイントです。
総じて、港北ニュータウンの豊かな自然環境を守り、次世代へと継承できる商品開発ができたことが良かったと思います。審査委員の方々からは以下のコメントをいただきました。
(審査委員の総評)原文
日本の近代化の過程で数多く建設されたニュータウンは、居住者の世代交代や建物の老朽化が大きな課題だが、一方で当時作られた緑地は、時間経過とともに厚みを増し、地域に豊かな環境を提供している。その価値に着目し、樹木群の維持管理や未来への継承を周到に計画されたこの集合住宅は、これからの時代が目指すべき開発の方向性を明確に提示してくれている。この緑地を最大限に享受できるよう作られた大きなバルコニーは、それだけでこの地に住まうことの喜びを支えてくれる心地よい空間だろう。
――プロジェクトを振り返っていただき、率直に今どんなお気持ちですか?
苦労が大きかった分、喜びもひとしおだなと感じます。LR武蔵野御殿山では立地条件に恵まれており、それにふさわしいコンセプトや商品企画を検討しました。
一方で、LRセンター南は駅から徒歩12分と条件が厳しく、いわばマイナスからの出発でしたからね。加えて、先ほどお話しした敷地内の保存林や南側の隣接建物もあり、クリアすべき課題がいくつもありました。
でも、結果的にはお客様に喜んでいただけましたし、会社としてプロジェクトも成功を収めた。そしてグッドデザイン賞まで受賞できたことは本当に嬉しく、デザイナーや施工者、販売スタッフをはじめとする関係者の皆様には感謝しております。
――お客様に喜んでいただけると嬉しいですよね!
LDでは住宅以外にもホテルやオフィスなど様々な用途の開発を行っております。私自身も多様な設計に携わりますが、私はやはり住宅が好きですね。
お客様にとって、住宅は一生に一度の高価な買い物であり、毎日の生活のステージとなるからこそ、とても厳しく細やかな目で物件を評価しますよね。
――そうですね、日常の買い物とは真剣度が段違いですよね。
だからこそ、その期待を上回る魅力ある建物を企画し完成させ、お客様にお選びいただけた時にこの上ない喜びを感じるんです。
会社の理念である「満足を超えた感動を提供する」を体現できるよう、お客様に喜ばれる商品づくりを目指して今後も頑張っていきたいですね。
