《物件概要》
物件名:リストレジデンス武蔵野御殿山
住所: 東京都武蔵野市御殿山2-18-7
アクセス:JR中央線・東京メトロ東西線「三鷹」駅
構造:鉄筋コンクリート造 地上3階建 延床面積 約3,920㎡
分譲戸数:45戸
設計:川口土木建築工業株式会社 一級建築士事務所
施工:川口土木建築工業株式会社
デザイン監修:株式会社プランテック
竣工:2023年8月
建物完成の5ヶ月前には完売し、プロジェクトとして大成功を収めたリストレジデンス武蔵野御殿山(以下、LR御殿山)。
同時期に販売された三鷹駅周辺の新築分譲マンションと比べてもその販売進捗の好調さは際立つこととなり、まさに三鷹駅エリアでは「独り勝ち」状態となった物件でした。その秘訣はどんなところにあったのか?
設計担当者の登坂にインタビューしました。
プロフィール
登坂 庸介(とさか ようすけ)
所属:リストデベロップメント株式会社 企画設計部 2課 課長代理
経歴:東京理科大学理工学部卒業 2012年中途入社
新卒では大手住宅メーカーにて戸建の営業職及びマンションの設計を経験。その後ゼネコンやコンサル業界を経験し、2012年にLDへ中途入社。現在は新築マンションやリゾート案件を中心にプロジェクトに携わる。
趣味はお酒全般。
武蔵野に、凪ぐ。
――まずはエリア全般からお伺いできればと思います。武蔵野市はどんな街なのでしょうか?
そうですね、まず武蔵野市の歴史を紐解くと江戸時代まで遡ります。1654年に江戸の飲料水を支える玉川上水が開通し、そこから武蔵野の原野が農地に変わっていきました。江戸の大火をきっかけに次第に都市部から人々が移住し、明治22年にはJR中央線が開通したことで、更に人口が増えました。玉川上水とJR中央線の開通とともに発展してきたのがこの街です。
武蔵野市は住宅地率84%の住宅都市となっており、また玉川上水や井の頭恩賜公園があり、美しい自然が広がっているところは大きな特長だと思います。
実は、日経BP総合研究所が発表した「シティブランド・ランキング 住みよい街2024」で、東京都武蔵野市は2年連続で首位となっているんですよ。
――人気のエリアなんですね!その中でもLR御殿山の特徴はどんなところですか?
交通面では中央線、東西線の始発駅でもある「三鷹」駅まで徒歩6分、若者文化やショッピングの中心となる「吉祥寺」駅までも1駅と、非常にアクセスに優れております。玉川上水に面した御殿山通りは法律によって厳しく建築制限がかけられており、上水の流れや緑と調和した統一的な景観の保全を図っています。
先ほどお話しした井の頭恩賜公園も徒歩圏であり、自然環境にも恵まれているところも良いところですね。利便性と自然が共存する立地となっているかなと思います。

三鷹駅の航空写真。緑の多さが窺える。
――その上で、今回はどのようなコンセプトを定めたのでしょうか?
街で一番人気の地にふさわしい「緑溢れる気品ある邸宅」
こちらが今回のコンセプトです。
御殿山アドレスの物件は特に希少性が高く、このエリアでの新築マンションの供給は約9年ぶりでした。だからこそ、立地のポテンシャルを最大限に引き出し、近隣の高層マンションとは違ったものを創りたい作りたいと思いました。
そこで、コンセプトを表現するキーワードとして「ゆとり・落ちつきのある住まい」「先進的だが流行に流されない住まい」「格式があり、誇りの持てる住まい」の3つを掲げています。

――9年ぶりとなると本当に希少性が伝わってきますね。想定していたターゲット層もお伺いできますか?
利便性と自然環境を併せ持つ立地の希少性を求める人々がターゲットであり、具体的には
① 30~40歳代のファミリー層(高収入のビジネスパーソン、経営者、士業等)
② 30~50歳代のDINKs(※)パワーカップル(世帯年収1,000万円以上)
③ 60歳以上のリタイア層(駅から離れた一戸建てからの住み替え希望層)
の3ターゲットを想定しました。
実際の購入層はほぼ想定通りだったので良かったなと思います。
※DINKs:Double Income No Kidsの略。共働きで子どもを意識的に持たない家庭やその生活観。
武蔵野の新しい正統を語りうる、端正な低層レジデンス
――コンセプトの実現に向けて、具体的にどのような設計にしたのか教えていただけますか?
ゆとりや落ちつきがある住まい、それでいて格式があって誇りの持てる住まいを表現するために、まずは「いかに上質な空間をデザインできるか」を検討しました。
質感を感じる「石」や「陶器」、「木」を中心としてシンプルにデザインすることを心がけ、エントランスホールは彫りの深い天然石張りとし、あえて無駄に家具を置かず「空間」を楽しめるデザインとしました。外観では木調のルーバーをリズミカルに配置し、竪樋を隠したことから邸宅感を醸し出すことができたと感じています。


――低層マンションということもあり、どっしりとしてかっこいい外観ですよね!他にもこだわりはありますか?
上質な空間デザインという観点で、一番こだわりがあるのはオーナーズゲートです。これがあると無いとでは大きく空間の印象が変わると思います。そもそも、今回の敷地形状がこういった形になっているのですが、建物の配置も非常に悩んだんですよね。
より正方形に近い形で土地を活用できた方が設計しやすいので、その観点でいくと北側をマンションの出入口としたくなるんです。しかし、せっかく玉川上水からのアプローチがあるわけですから、それを活かさない手は無いということで、南側を出入口としました。

マンションの「顔」となるオーナーズゲート
――確かに、緑を感じながら帰ってこれるほうがより素敵ですよね。
そうなんですよ。ただ、南側は旗竿地(※)となっているため、エントランスまでのアプローチをどうデザインするのかが南側を出入口とした場合の課題でした。通常、解決策の一つとしてこの通路部分に自転車置き場を配置するのが合理的なんですよね。使い勝手も良くなりますし。でも上質な空間デザインという観点では納得がいかない部分もあり…。
※旗竿地:道路に面した間口が狭く路地状で、奥に広い敷地がある形状の土地のこと。上から見ると旗に竿が付いたような形状のため旗竿地と呼ばれる。

――出入口付近に自転車置き場があると確かに便利ですが、生活感が出て上質さは欠けそうですよね…。
そこで、今回のようにオーナーズゲートを設け、通路部分には何も作らず緑を配置することにしました。そうすることで、玉川上水から緑でつながるアプローチ空間となり、住人の方やお客様をしっかりとお出迎えする立派なマンションの「顔」になったかなと思います。
副産物として、北側は車やバイク、自転車の出入口とし、南側を歩行者にしたことによって歩車分離で安全な動線を実現できたのも良かったですね。
――「先進的だが流行に流されない住まい」というキーワードはどのように表現されたのでしょうか?
ターゲットも鑑みて、この物件を「終の棲家」にしてほしいなと思っていて。そうすると、やはり安心・安全で健康な暮らしを実現することは重要だと考えました。そこで、LR御殿山は耐震等級2(※)を取得しています。
耐震等級2は学校や病院といった、有事に避難所として利用される建物の基準となっているので、マンションを耐震等級2にすることは非常に珍しいですね。この基準を満たしているのは、全国にあるマンションのわずか8%程度と言われています。
他にも省エネ性能や断熱性能を高めただけでなく、最新のセキュリティ対策や防災対策、水や食の安全性を保てる様々な仕組みや設備を取り入れたので、永く暮らしていただける住まいにできたのではないかと思います。
※耐震等級
地震に対する建物の強さを表す指標。1から3までの等級で評価され、耐震等級が高いほど、地震による倒壊や損傷のリスクが低くなる。
マンションの1階=売りにくい???
――LR御殿山PJで苦労した点はどのようなところだったのでしょうか?
低層マンションならではの苦労がありましたね。一般的に、マンションの1階は売りにくいって言うじゃないですか?今回は3階建のマンションなので、1階が売りにくいとなるとプロジェクト全体の1/3が売りにくくなってしまいます。どう工夫して1階の物件を魅力付けするかということが今回の肝でした。
――マンションならではの眺望が楽しめなかったり、セキュリティやプライバシー面が気になったりと、どうしてもネガティブな印象は持ちやすいですよね…。
そうなんですよ。でも、「1階=売りにくい」というのは業界や営業の方々の先入観だと思っていて、工夫が大切なんですよね。
セキュリティ面ではマンション全体としてダブルオートロックなどを活用し、二重のセキュリティラインを設けることでより強固なセキュリティを確保しています。さらに駐車場にもシャッターゲートを設けることでより防犯性を強化することができました。
1階は陽当たりの良い屋外テラスを設けていますが、有孔ブロックを設けることでプライバシーを確保しています。通常の目隠しブロックとは異なり、有孔ブロックは風が通り、閉塞感を感じることなく視線が遮れるところが優れていますね。
2階、3階のバルコニーよりも広い空間となり、セカンドリビング的な利用ができることが、購入者からの支持をいただけた要因だと考えています。屋外テラスは床面積に含まれないですしね。

有孔ブロックや床タイルで設えた1階の屋外テラス。駐車場を通る他の入居者からの視線をカットしつつ、開放感を感じることができる。
――1階ならではの懸念点が解消されるのはいいですね!そう言われるとなんだか1階ってお得な気がしてきました…!
実はもう一箇所工夫したところがあるんです。外廊下となる場合、通路に面する1階の窓には必ず面格子を付けますよね?あれって、もちろん防犯上必要ではあるものの、正直すごく安っぽい仕上がりに見えませんか?
――はい。でも面格子が付いてしまうのって当然というか、嫌だけど仕方がないものだと思っています。
そこも先入観から来るものだなと思っていて。結論、LR御殿山ではFIX+縦すべり出し窓にすることで面格子を使わない設計にしています。面格子は不審者の侵入を防ぐことを目的に設置するものなので、極端な話、開かない窓であれば面格子は不要なんです。
とはいえ、窓が開かなければ換気をすることができないので、それはそれで困る。そこで、基本的にはFIX窓をベースとし、その左右に人が通れない幅で換気用の窓を設けることで機能性と防犯性を両立させました。

面格子が無いことでスッキリした印象に仕上がっている。
――なるほど!面格子が無いと外観の印象が大きく変わりますね。
そうですね。非常に細かいところですが、実際にお客様からも「こういった細かいこだわりが気に入った」とのお声もいただけて非常に嬉しかったですね。
眺望はどうしようもない部分ではありますが、その代わりに1階だとテラスを広く設けることができていいですよ!お子様の良い遊び場になると思います。エレベーターも使わなくていいから楽ですしね。
モデルルームを1階に作り、家具等を設置して生活イメージをより明確に提案できるようにすることで1階の住戸も広くお客様に受け入れていただけたと感じています。

モデルルーム
自信を深めたプロジェクト
――プロジェクトを振り返っていただき、率直に今どんなお気持ちですか?
改めて考えると、やはり商品企画の部分が非常に上手くいったプロジェクトだったと思います。外観デザインやランドスケープをはじめ、「終の棲家」としての商品コンセプトがお客様に受け入れられ、1億円以上の価格に見合う商品とすることができました。
加えて、1階の魅力付けが功を奏し、早期完売及び1階価格の低下にならなかったことが良かったと思います。
土地購入後に近隣住民の方からの反対もあり、交渉に苦労した部分もありましたが、仕入担当と設計担当がチーム一丸となって対応できたことも印象深い点です。
早期完売したことから他のデベロッパーからも注目の物件となり、担当者としては自信を深めることができるプロジェクトとなりました。昨今のLDは開発物件が多岐にわたり、今はリゾート開発等も担当しているので、今回の経験も活かしてより良い物件を作っていけるよう引き続き頑張ってまいります。